【レビュー】あの世とこの世を行き来するホラーサスペンス 「THE MEDIUM」の評価は?

ゲームレビュー
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「Blair Witch」などを手掛けたことで知られ、ストーリーテリングの手法に定評のある開発会社Bloober Teamが、2021年1月に発表した新作ゲーム「THE MEDIUM」。

ホラー・サスペンス・アドベンチャーの要素を取り入れた新規IPで、発売開始と同時にXbox Game Passに対応したことでも注目を集めました

という訳で本記事では、そんな注目のゲームTHE MEDIUMをクリアした筆者が評価、感想、どのような方におすすめかなど、徹底的にレビューしていきます!

タイトルTHE MEDIUM
対応機種PC, Xbox X/S, PS5
発売日2021年1月28日
開発元Bloober Team

THE MEDIUMってどんなゲーム?

THE MEDIUMを一言で表すと、サスペンス+ホラーアクションアドベンチャーゲームです。アクション要素はおまけ程度で、比較的映画的なシーンだったり、ちょっとした謎解き要素がメインのゲームかなという印象。

心霊描写はあるものの、ビックリさせよう!とか、怖がらせよう!みたいなシーンは控え目だと思います。どちらかというとキャラクターの深層心理に迫るような、シリアスでサスペンスチックな表現が多めでした。

そのため、ホラーは超絶苦手!という方でなければそこまで気にしなくても大丈夫だと思います。

THE MEDIUMの個人的なスコアを発表!!

  • ストーリー/世界観:8点
  • グラフィック:7点
  • 操作性:4点
  • アクション:2点
  • やりこみ度:3点
  • 合計:24/50点

正直本作はゲームというよりも、ひとつの映像作品として楽しんでいただいた方がよいのかもしれません。もしくは体験型アトラクションとか。

グラフを見ていただけばお分かりかと思いますが、世界観やストーリーテリングの手法はとても良かったものの、アクションや操作性の部分が今ひとつという印象。

消してクソゲーではないと思いますし、個人的にはそれなりに楽しめましたが、

何を期待してプレイするか

がミスマッチを起こすと評価が一転してしまうゲームだと思います。

ここからは各評価項目ごとに、そのあたりの詳しい解説をさせていただきます。

斬新な映像表現と練りこまれた世界観

主人公のマリアンによる回想によって物語が描かれていく

本作は幼いころから霊能力(?)をもって生まれたマリアンという女性が主人公です。彼女は「あの世」と「この世」を行き来することができ、二つの世界の間、つまりMEDIUMな世界を生きています。死者と対話したり、心の中を覗いたり、他にも”物”に宿る記憶(エコー)を読み取る念視能力も持ち合わせています。

彼女はなぜ特殊な力を持っているのか?マリアン自身の正体や出自について迫るー。というのが本作の主なストーリーとなっています。話の大筋自体はあまり複雑ではありませんが、細かい部分は多少分かりにくく感じるかもしれません。また、個人的には結末も不完全燃焼といった感じで、雰囲気は非常に良いものの少しムズムズする仕上がりに感じました。(※ネタバレを避けるために結末については明言しません)

多くを語りすぎず、すべてを描き切らず、結論をプレイヤーの想像にゆだねるようなストーリーテリングの手法は非常に良かったと思います。霊能力によって他人の精神世界に入り込むようなシーンも要所要所で用意されているのですが、そちらも没入感バッチリでとても楽しめました。しかしながら、これらの奥深い表現がローカラーズというフィルターを通すことによって若干複雑化してしまっているような印象も受けました。

直訳感のある少しお堅い言い回しであったり、男性キャラの語尾が「~だわ!」みたいになっていたり、フォントが日本語の漢字に最適化されていなかったり(中国語みたいな漢字が度々登場します)。

そうは言っても、全く意味が理解できないという程でもなく、洋ゲーの平均値から逆算すればまずまずのクオリティではあるものの、ゲームの性質を考えるとローカライズにはもっと力を入れてほしかったというのも本音。予算的に難しい部分もあるのかもしれませんが、ストーリー重視のゲームですからこの辺は少し残念でした。(不吉な笑い)

英語音声+日本語字幕で、原文のニュアンスも頑張って聞き取りながらプレイするのがおすすめです。

英語が得意な方は全部英語の方がいいかも。

また、物に宿る記憶(エコー)をたどるという事は、今ここに存在しない過去の人物たちについて深堀りしていくという事になります。そのため、名前しか登場しなかったり、間接的にしか描写されていない人物たちの関係性を整理整頓するのが少し大変だなと感じました。

ちなみにバイオハザードシリーズなどと同じく、ゲーム内で手紙や書類などのテキストアイテムを収集し、それらを読み解きながらストーリーや背景を深く理解していくゲームシステムが採用されています。攻略上必須ではないものの、アイテムを収集しながらストーリーや背景を理解させる手法は若干好みが分かれるところかもしれません。

一方で世界観は非常に良く練られていました。「あの世」と「この世」の両方を見ることができるマリアンの世界を追体験させる手法として、本作では「二重現実」方式と呼ばれる、画面が2分割されて同時進行していくようなシーンがあります。ちなみにこの二重現実方式は特許取得済みとのことです。

左がこの世、右があの世。2画面で同時にゲームが進行していく斬新なシステム。

こういった映像表現は没入感が高く、目新しさもあってプレイしていて楽しかったです。「あの世」の退廃的な世界観は、不気味ながらもどこか美しさを感じられる、非常に素晴らしい仕上がりでした。一方で、二分割シーンに差し掛かるとゲームが重くなってしまうのは少しだけ残念でした。そりゃ同時に2画面分の処理が必要なわけですから、重いのは分かるんですけどね…。

不完全燃焼で若干分かりにくいストーリー、一方没入感が高く練りこまれた世界観。間を取って8点とさせていただきます。

所々粗さも感じる、重めのグラフィック

このゲームのグラフィック(テクスチャ)は基本的には美しいと思います。風景や光の描写などはしっかり2021年発売のゲームらしいクオリティを感じます。

一方で人物の表情、目の動きなどからはあまり魅力を感じませんでした。きれいはきれい、でもリアリティを感じない、そんな印象でした。

静止画で見るとグラフィックはとても美しいです
ムービーシーンになると若干人形感が…

また、先述の通り画面が2分割されるシーンでは処理が重くなりフレームレートも下がり気味でした。映像表現としてはとても楽しめましたが、あくまでゲームですので過度に重くなる演出は避けてほしいというのも本音です。

突出して美しいとまでは言えず、画面分割時には重めの負荷がかかってしまう、コスパの悪さが若干気になってしまうゲームでした。その点を差し引いて7点とさせていただきます。

固定カメラに難儀するゲーム

このゲームはなんと言っても固定アングルカメラが最大の難敵です。昔のバイオハザードやFF10みたいなイメージと例えればお分かりいただけるでしょうか。

カメラアングルを一切動かせず、常に死角が生まれてしまう

もちろん開発陣としても狙いがあってそうしたのだと思います。アイテムを見つけにくくするためであったり、敵キャラとのチェイスに緊迫感をもたらしたり。不自由だからこそ恐怖や焦りを感じてしまう場面があったことも確かです。

ただし、ほんとにぶっちゃけた話、今時そんなゲームをユーザーは遊びたいでしょうか?不自由さにょって難易度が調整されているようなゲームって、やりこみたいと思えるのでしょうか。ストレスと難易度のバランスは非常に紙一重だと思います。このゲームの場合、その天秤がストレス側に傾いてしまっているのだと思います。

物語の中盤から終盤にかけていくつかパズル要素が盛り込まれているのですが、こちらも難しいというよりは分かりにくい。最終的にはストレスを感じた印象ばかりが残ってしまいました。

結果的には最後までプレイすることができましたが、それはあくまでもストーリー面に魅力を感じたからです。もしストーリーも凡庸なゲームであれば、恐らく途中で飽きてしまっていたでしょう。映画やドラマとしては楽しめましたが、ゲームとしては正直微妙な仕上がりだと言えます。

ちなみにHPなどのUIはデフォルトでOFFになっています。メニューも非常にシンプルで、とにかくミニマルなデザインという印象を受けました。画面に一切の無駄(メタ要素)がないという点は没入感を高めるいいポイントだと思います。

また、字幕には話者の名前表示のON・OFF切り替え機能や、話者によって字幕の色を変える機能など、ちょっとしたこだわりを感じました。この辺りの観点からみると操作性は決して悪くないと思います。やはり最大のマイナスポイントは固定カメラアングルに起因するオブジェクトやマップの分かりにくさでしょう。

ということで操作性は厳しめの4点とさせていただきます。

迫力に欠けるおまけ程度のアクション

本作には戦闘という戦闘はありません。主人公のマリアンは霊能力者ではあるものの、あくまで他の人には見えないものが見えるだけ。幽霊と戦ったりするような力は持っておらず、本作におけるアクション要素と言えばかくれんぼ追いかけっこです。

もちろん、主人公に戦闘能力がないというシステムはホラーゲームあるあるですし、そこ自体には何の文句もありません。問題はその内容の雑さです。

かくれんぼ要素と言っても、ただその場で待機していれば敵は勝手にどこかへ行きますし、勝手に背中を向けてくれます。一応スニーク要素として、かがんだり息をひそめたりするコマンドが用意されてはいますが、特段必要ないというか、別にそれをさぼったから敵に見つかるようなシステムになっているわけでもなく。敵のAIがザルすぎて、取ってつけた感が強いというか、やりごたえに欠けるというか…

追いかけっこにしてもただ道なりに走るだけ、無意味に綱渡りをするだけ、障害物を置いて道を塞ぐだけ。頭を使うことやシビアな操作を求められる訳ではなく、こちらもやりごたえがありません。またカメラアングルが悪く、どっちに行けばいいのか?何をすればいいのか?が分かりにくかったのも不親切に感じました。

冒頭でもお伝えした通り、アクションゲームとしての出来は相当低いです。アクション性や操作性には過度な期待をせず、あくまでストーリーや映像表現を楽しむためのゲームだと思っていただく方が安全でしょう。

ということでアクションは2点とさせていただきます。

一本道ゲーで周回要素も特になし

本作はメインシナリオ以外に特別やりこみ要素はありません。マルチエンディングやハードモードなども実装されておらず、周回要素もありません。

肝心のメインシナリオですが、おそらくサクッと10時間前後でクリアできるのではないでしょうか?ゲーム内のテキストをじっくり読んだり、ストーリーについて考察しながらプレイすればもう少し時間がかかるかもしれませんが、恐らく皆さん20時間もかからずにクリア可能だと思います。

そんな訳ですから、やりこみ度合いはかなり低いです。筆者のように「Xbox Game Passでサクッと遊べるゲーム」という認識なら問題ないでしょうが、正直このゲームに6000円を払うだけのボリュームがあるかと聞かれると…個人的には少し割高に感じてしまいます。

という訳で、やりこみ度は低めの3点とさせていただきます。

まとめ:映画としては◎ ゲームとしては×

いかがでしたでしょうか。最後に本記事の内容を3行でまとめるとこんな感じです。

  • ストーリーや映像表現は質が高い
  • ホラーよりもサスペンス感が強い
  • 映画としては良作、ゲームとしては操作性やアクション要素が×

最後まで読んでくださりありがとうございました。この記事が皆様のゲームライフを豊かにする一助になれば幸いです。このほかにもゲームに関する情報を色々と発信しておりますので、チェックしていただけたらとても嬉しいです!

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