2021年に発売されたアクションRPG「BIOMUTANT」。モフモフのケモノキャラを操作できるオープンワールドゲームの最新作として、発売前から話題になっていたタイトルです。
しかしそんなゲーマー達の期待感とは裏腹に、いざ発売されるとSteamのレビューは「賛否両論」。放火系YouTuberナカ〇ドさんからは炎上ゲーム扱いされる始末。
ということで本記事では、
の3点について取り上げて行きたいと思います。
BIOMUTANTってどんなゲーム?
BIOMUTANT(バイオミュータント)とは、オープンワールドのアクションRPGゲームです。
時代設定は近未来の地球。とある企業による行き過ぎた開発は地球環境を汚染し尽くし、それによって人間が絶滅してしまったという、いわゆるポストアポカリプスな世界観です。
汚染され地球では動物たちが変異によってミュータント化し、人間の消えた世界で独自の文化体系を築いています。
人間達の暮らしていた廃墟が散見される退廃的な世界と、自然豊かな動物的な世界とが入り交じった、魅力的なフィールドが広がっています。
タイトル | BIOMUTANT |
対応機種 | PS4,Xbox One,PC |
発売日 | 2021年5月25日 |
開発元 | Experiment 101 |
炎上するほどのクソゲーか?
個人的な感想にはなりますが、炎上するほど酷いゲームではないと思います。
詳しくは後ほど説明しますが、確かに作りの粗いゲームであることは間違いありません。価格に見合った面白さがあるか?という点においても悩ましいラインだと思います。しかし、さすがにクソゲーは言い過ぎだと思います。
賛否両論の原因は?
恐らくこのゲームが過度に低評価されている原因は、大きく分けて以下の3つにあると思います。
ということで、ここからは賛否両論の「否」は何が原因なのか?という点について考察していきます。
期待感が大きすぎた
本作は販売前から話題性のあるタイトルだったと思います。
美麗なグラフィック、ケモノ視点の斬新な世界観を伺わせるトレーラーなど、まるでAAAタイトルかのようにゲーマー達の熱い視線を集めていました。
しかし実の所、本作はしがないインディーゲーム。所々作りが甘くても、本来なら予算的にも開発規模的にも(ある程度は)仕方のないゲームなのです。
インディーの洋ゲーってこんなもんだよね
と思いながらプレイすればまた印象は違ったかもしれませんが、事前情報の期待感からハードルが上がりまくった結果、
ふざけるな金返せ!
みたいな事になってしまい、必要以上にゲーマー達の怒りを買ってしまったのではないでしょうか。
初期バージョンがかなり雑だった
発売当初、Steamストア内では
という趣旨の低評価レビューが非常に多かったと思います。
初期バージョンでは、ゲーム冒頭に約1時間にも及ぶチュートリアルが用意されていました。筆者自身、自由きままにポストアポカリプスな世界を旅したいのに、ダラダラとチュートリアルをやらされて面倒だなと感じてしまったのも事実。
チュートリアルが長いだけであればまだしも、チュートリアルの段階から
などと言った、このゲームのネガティブな部分が早速顔を出してしまっているのが1番の問題でしょう。そのため、“長くてつまらないチュートリアル”+”面白くなりそうな匂いがしないゲーム”に匙を投げるユーザーが続々登場したのだと思われます。
これらイマイチなポイントについては後ほど詳しく説明します。
※なお、発売から1ヶ月ほどで発表されたver1.4のアップデートパッチにより、チュートリアルが大幅に短縮されたようです。そのため、これから新しくプレイされる方は、チュートリアルの長さについてはあまり気にしなくても良さそうです。
日本語ローカライズがハチャメチャ
本作の日本語ローカライズはとにかく分かりにくいです。翻訳のクオリティに関してはもちろんのこと、それ以外にも様々な要因が絡みあい、とにかく会話やテキストの内容が入ってきません。
先程も申し上げた通り、この世界では人間が絶滅しミュータント達が独自の文化体系を築いています。そのため、固有名詞の名称が我々の思っているものと異なるケースがあるのです。
例えばミュータント達は銃のことを「ピューピューポコポコ」と呼んでいます。そのためゲーム内では説明が無いまま
「ピューピューポコポコが○○だ」
みたいなテキストが出てきます。
全体的な翻訳クオリティの低さも相まって、【そういう演出なんだ】と気付くのに10時間くらいかかりました。普通に誤訳か何かだと思ってましたし、銃を指しているということにも最初は気付けませんでした。
何はともあれ、混み入った世界観を表現しきるにはあまりにも拙い日本語ローカライズが、日本人ユーザーからの評価を下げているというのはほぼ間違いないと思います。
筆者によるレビュー
好き勝手色々言ってしまいましたが、ここからは何だかんだで40時間ほどプレイした筆者によるBIOMUTANTのレビューをお届けします。
BIOMUTANTの個人的なスコア
ストーリー・世界観 | |
グラフィック | |
操作性 | |
戦闘 | |
やりこみ要素 | |
総合点 |
ポストアポカリプスでありながら広大な自然が広がる独特な世界観と、それらを表現しきったグラフィックについては、個人的にもかなり楽しませていただきました!
イマイチな点に関しては大体が前項で触れた通りです。テーマや舞台など素材の良さはピカイチですが、ゲームとしての完成度が低かったかなと思います。
なんか最近そういうゲーム多い気がする
その辺りを含めここからは各項目ごとに詳しく解説していきたいと思います!
魅力的な世界観と残念な物語
先ほどからも何度か触れている通り、本作の舞台は近未来の地球。行き過ぎた環境破壊により地球上から人間が絶滅してしまった「ポストアポカリプス」な世界観が魅力です。
過酷な環境に適応すべく変異した動物たち「ミュータント」が、かつての人間たちのように独自の文化体系を築きながら暮らしています。しかし人間に比べると文化・科学レベルは発展途上で、そのため人間が死滅した地球では、部分的にではありますが手付かずの自然も芽吹いています。
この「退廃的な人工物と広大な自然の融合」が本作の個性であり魅力でもあると思います。グラフィックの美しさも相まって、フィールドを探索しているだけで何とも言えないエモさがありました。
また、所々で感じられるアジアンテイストも”趣”がありました。日本風の甲冑を着込んだミュータントがいたり、BGMも中華風なスケールを使用した楽曲が多く見受けられました。
また、ミュータント達が「ワン・フー」と呼ばれるカンフー的な武術を駆使して戦っている所からも、アジアンテイストを意図的に取り入れていることが分かります。
一方で、ストーリーに関してはかなり微妙な印象を受けました。というより、正確に言えばストーリーテリングの手法に問題があったと思います。
本作の主人公にはバッタ型アンドロイド(?)の相棒がいるのですが、ゲーム中に登場するキャラクターとの会話は全て、このバッタによる伝聞形式で進んでいきます。
「彼は○○と言っているようだ」
「そうするべきではないと彼は言っている」
といった形で、全ての会話がバッタを通してプレイヤーに伝えられる仕組みになっています。このシステムのせいで没入感が台無し。バッタの話を聞かされてる感がすごいです。
そもそもミュータント達はケモノ語?を話しており、キャラボイスは全て
「◎△$♪×¥●&%#?!」
といった感じの造語です。昔のモンハンと同じ形式ですね。
ゲーム内でも実際にバッタが通訳をしているかのような描写があるため、設定やリアリティを追求した結果このような形に行きついたのかもしれませんが、失敗だったと言わざるを得ないでしょう。
ちなみに個人的には、ローカライズ作業を行う上で、大量の声優をキャスティングする事が予算的・コネ的に難しかったのかな?と勝手に想像しています。
みたいなプロセスで、悪魔のナレーションバッタが誕生したのではないでしょうか。知らんけど。
そもそもの翻訳クオリティが低いうえに、理解しにくい固有名詞が多く、更には伝聞形式のため主体や客体を見失いやすい。ユーザー側から歩み寄る努力をしない限り最大限楽しめないゲームだと思います。
ストーリーそのものは悪くなかったと思います。環境破壊を極めた地球において、主人公はどう生きるのか?がテーマとなっています。「トライブ」と呼ばれる同盟みたいなものが世界各地に散在していて、各トライブ事に異なったポリシーを持っています。
「世界を一度破滅させてリセットしよう!」
といった過激な思想を掲げるトライブもあれば、
「今こそ手を取り合って世界の危機に立ち向かおう!」
といった考えのトライブもあります。どのトライブに協力するのかによって、細かい分岐や最終的な目的が変化していく仕様は面白かったです。
ストーリーテリングや日本語ローカライズに難がある本作。完全初見で何となくゲームをプレイしているだけでは、恐らくしっかりとストーリーを理解するこはできないでしょう。事前のトレーラーや各種情報サイトをチェックしていた筆者でも、所々ストーリーを見失いがちでした。何度も言うようですが、プレイヤー側からゲームに歩み寄る努力が必要です。
という事で、諸々を踏まえてストーリー・世界観は3点とさせていただきます。
広大な自然を楽しめるグラフィック
本作のグラフィックはかなりキレイな印象でした。環境汚染が進んでいるとはいえ、人類が絶滅した後の地球では所々手付かずの自然が。美しい緑の中をケモノキャラで駆け回るのはとても爽快でした。
わずかに残った人工物も、ミュータント達の暮らす街も、どれも丁寧に描かれていて没入感がありました。
表示上のバグもほとんどなく、グラフィックは前評判通り非常に美しい仕上がりでした。強いて言えばもう少しミュータント達が表情豊かだったら良かったかな、と思いました。感情の動きみたいなものが表情からほとんど感じられず、その点だけ少し味気なかった印象です。
という事でグラフィックは4.3点とさせていただきます。
直感的なキャラクリがとにかく魅力的
UIデザインや操作感は特別悪くないと思います。
ジャストガード(パリィ)やジャスト回避など、アクションコマンドも違和感なく直感的に操作できました。相手が攻撃してくる瞬間に⚡️マークが敵キャラの頭上に表示されるため、それを目安に回避やガードを入力すると簡単にパリィやジャスト回避が可能です。この辺りのカジュアルな操作感は非常に好印象でした。
バグに関しては、思っていたより大分少なかった印象です。インディーゲームのオープンワールドゲームという事もあり、進行不能バグのひとつやふたつは覚悟していましたが、そういったバグに巡りう事はほとんどありませんでした。
本作にはミニゲームのようなパズル要素が所々に用意されているのですが、そのパズルをクリアしているのにクリア判定が発生しないというバグには一度だけ出会いました。セーブデータをリロードしたら治りましたし、そこまで深刻なバグではないと思います。
個人的にこのゲームで一番気に入ったのがキャラクタークリエイトです。本作のキャラクタークリエイトでは見た目とステータスとが連携していて、例えば知能を伸ばせば見た目も頭でっかちに、筋力を伸ばせばマッチョ体系になります。ポインターを動かしながらステータス・見た目を同時に調節するという、斬新&直感的な素晴らしいキャラクリシステムだと思いました。
SNSやストアのレビューを見ても、このキャラクリに対する肯定的な意見は非常に多かったように思います。ぜひ未プレイの方はこのキャラクリだけでも体験していただきたいです。
本編が合わなかったら返品すればいいし!
という事で操作性は4点とさせていただきます。
軽快なアクションと単調な戦闘
本作では近距離武器、遠距離武器の2つを使い分けて戦闘を行います。近距離武器には剣やハンマーなど、遠距離武器にもピストルやライフルなど、豊富な武器種が用意されています。敵がドロップする素材やパーツを組み合わせて、オリジナルの武器をクラフトする「ハクスラ要素」も本作の魅力のひとつ。
近距離武器と遠距離武器を自在に切り替えてコンボをつなげる戦闘は「デビルメイクライシリーズ」に少し似ていると思います。あくまでスタイルが似ているというだけで、アクションやコンボの難易度はDMCシリーズよりも相当カジュアルな仕上がりですのでご安心ください。
アクションの操作は爽快感があって楽しかったです。ジャスト回避を決めると一瞬スローモーションになるような演出が入って、反撃のチャンスが生まれます。簡単なことをやっているだけなんですが、高度なアクションを成功させたかのような達成感があります。
一方で、戦闘そのものは若干単調で少し退屈な印象。⚡マークが出たらパリィか回避をして、その後は距離を取って銃を撃つだけ。ワンパターンなボス、数がやたら多いザコ敵と、1回1回表情の違う戦闘を楽しみたい方には少し不向きなゲームかもしれません。
また本作は遠距離武器がかなり高火力であり、遠くから銃でバンバン打ってるだけの戦闘が主流です。リスクを取って近距離武器を使うメリットが薄いという感じですね。こちらはV1.4のアップデートにて武器バランスの再調整が行われ、多少改善しているようです。ユーザーの声を受けて、このように頻繁にアップデートを行ってくれるのは非常にありがたいですね。まだ銃強いですけど。
美しく退廃的な世界を自由に散策できるので非常に楽しめました。広大な自然の中に、化学汚染が激しい場所や酸素濃度が薄い場所など、様々なギミックが用意されているのも「ポストアポカリプス感」があって楽しかったです。
その代わり、マップの密度はそこまで高くありません。サブクエストやダンジョンなど、マップの広さに対して遊べる要素の数は少ないと思います。その点はちょっと残念でした。
という事で戦闘・探索は3点とさせていただきます。
若干物足りないボリューム感
ストーリーやサブクエストを含め、やりこみ要素は少し物足りない印象でした。
やはりマップの広さに対してイベントの密度が低いので、ある程度世界観やマップを楽しんだ後はそこまでやることがありません。強くてニューゲームモードやマルチエンディングが採用されていますが、何周もするほど中身の詰まった濃いゲームではないと思います。
例えばどのトライブと同盟を結んでも固有のイベントやクエストなどはほぼ無いに等しいです。ストーリーの進行やイベントが変化するものの、ゲーム体験としては何周もするほどのバリエーションが用意されていないといった印象を受けます。
ゲーム内に登場する「メクトン」というロボットのパーツ集めなど、ちょっとした収集要素はありますが、パーツを変更してもステータスなどに一切影響はなく、完全に見た目の着せ替え要素と化しています。この辺りも絶妙にやり応えが無くて残念です。
ゲームの難易度を上げて、ハクスラ要素を楽しみながら強い装備を作るという楽しみ方はできますが、結局その先にやることや目的がないのでちょっと物足りなく感じてしまいました。
という事でやりこみ要素はやや低めの2.5点とさせていただきます。
まとめ:世界観◎・細かい部分△
世界観やキャラデザ、そしてキャラクタークリエイトなど、斬新で面白い要素がたくさん詰まったゲームであることは間違いありません。
詰めの甘さや調整不足、そしてやはりストーリーテリングや日本語ローカライズが足を引っ張っている印象を強く受けました。
しかし発売開始から短いスパンでアップデートパッチを配信してくれたりと、素早い対応をしてくれる点は非常にありがたいですよね。また、日本語ローカライズの改善に関しても「現在準備中」とのことです。
大規模な開発会社の場合だと色々なしがらみもあるでしょうし、ユーザーの声を基に身軽に修正してくれるのはインディーゲームならではの良さかもしれません。
AAAタイトル=日本語ローカライズが良いとも限らないしね
最後まで読んでくださりありがとうございました。この記事が皆様のゲームライフを豊かにする一助になれば幸いです。このほかにもゲームに関する情報を色々と発信しておりますので、チェックしていただけたらとても嬉しいです!
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